なんちゃら指数は伊達じゃない
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りさこは冷たいなあ。
ももがいつものように言う。
「そんなことないよ」
えーそんなことあるよ、って言いながら、ももが私の頭を撫でてくる。
もものこと、ちゃんと好きだ。
ただ、いちゃいちゃするのが苦手なだけ。
「もも」
頭に乗せられた手を、自分の胸元に引き寄せる。
その手の甲に軽く口付けた。
とっておきの笑顔をにこっと作って見つめると、
ももは一瞬びっくりしたような、対応を決めかねているような顔をした。
「二人だよ」
ももは一瞬とぼけた顔をして、それからくしゃっと目を細くして笑った。
こういうももが、一番可愛いなあって思う。
「今のももの笑い方好き」
「ほんとほんと?」
もう一度笑ってみせるけれど、もうそれじゃない。
「ちょっと違う」
試しにほっぺにキスした。
肩に手をかけて、見つめてみる。
口の動きだけで、ふたりだよ、と伝える。
ももは、一度目とも二度目とも違う顔をして、私の目をじっと見つめ返してきた。
このもも、可愛い。
テレビカメラが、これくらいのアップでももをずっと撮ってたらいいと思う。
「まけた」
そのうち恥ずかしくなってきて、ももの体に顔をうずめた。
そのままぐりぐりと顔を押し付ける。
「やったー!ももの勝ち」
ももが叫ぶと、骨伝導みたいな感じで声が聞こえてきた。
楽しい。
ももの鎖骨のあたりに、耳をピタリとくっつけた。
「もっかいなんかしゃべって。これ面白い」
「りさこだいすきー!」
「すごい。ぶるぶるってする。ももやってみ」
「ほんとー?」
ふざけた声を出しながら、ももが私の右肩に頭を乗せてきた。
私がももの左肩だから、向かい合うような姿勢になった。
「ももー!」
「あっ、思ったよりぶるぶるするね! たのしい!」
「もーーーもーーー!」
「りーーさーーーこーーー!」
二人でわーわー言いあった。
こういう風に遊べるももが、ずっと好きだった。
最近は、ちょっとなんか違うんだ。
「ももは素直になったほうがいいよ」
「駄目出し?」
「ってか、素直になって。ほんとに」
「それは梨沙子のほうでしょ」
そう言われるとその通りで、私は何も言い返せない。
「ベリーズはさ。素直じゃない子多いよね」
「うん」
「ももはさ、でも、ちょっといきすぎだと思う」
こんなこと、昔は言えなかった。
「ホントのこと言ってもいい?」
ももが真剣な顔してそう言った。
私はちょっと体を固くした。
何を言われるか、こわかったのだ。
そして半分、期待もしていた。
私は首を縦に振った。
「ももが素直になってもさ、みんなをひとりじめできるわけじゃないじゃん?
もも、みんなのこと好きだし、みんなのことひとりじめしたい。
けどそういうのは、無理だから、だったら何も言わない方がいいなって、
そうしたら癖になってて、あんまり気にならなくなったの」
みんなをひとりじめしたい?
「何言ってんのもも」
「もうっ! だから言いたくなかったのにー」
「ひとりじめしたいって、だって、え? どういうことなのかよくわかんないんだけど」
「たとえばさー、今みたいなこと」
ももは自分を指して、それから私を指差した。
私はちょっと心が跳ねる気がした。
「その『みんな』に、私入ってるの?」
言ってから、自分の声の調子があんまりにも弾んでいるのに気付いて焦る。
拳一つ分ちょこんと、ももから離れた。
ももは、それには特に何とも思わなかったみたいで、こくん、と頷いた。
「りさこのこと、ひとりじめしたい、よ?」
「なんで疑問系」
「普段意識しないようにしてるから。
でも二人きりだし、なんか、今日のりーちゃん優しいし、ふふ、嬉しい」
ももがからかう風でもなく、自然にそう言った。
この人は私がいると喜ぶんだ、ってことを、ようやく実感できた気がした。
「じゃあ今日は、ももの隣いるから」
「え?」
「決めたの。今日はずっとももの隣いる」
「りーちゃんどうしたの? もものこと好きなの?」
「そういうこと言うからやだ」
「なんでよー!」
「もも、照れてるんでしょ。
そういう、照れ隠し言って、言い訳しようとしてるんでしょ。
よくないよ、それ」
ももが、何も言えなくなったみたいで、急に私の脇腹をくすぐってきた。
私はその手を払い除けた。
「理由は教えない。けどももの隣いるね。絶対だから。
みやもちぃもキャプテンも隣座らせちゃダメ」
「てかそんなことしなくても大体隣位置じゃん」
「移動の時も!全部隣」
「そんなことしたらぁ、りーたんともぉの関係がバレちゃうってばぁ」
また始まった。
「次、そういうこと言ったら罰ゲームね」
「うそうそ!りさこ厳しいよ!」
「厳しくない。ももが悪い」
「罰ゲームってなに?なにするの?」
罰ゲームって言い出したのは私なのに、ももは何故か妙にテンションが高い。
「罰ゲームは、んーと」
「許してにゃん一緒にやる?」
「ううん」
「えー」
「キス、ね」
ちょっとわがまま言ってる。
自覚はあった。
「い、いいよ、キス、キスね」
ももの目は、ちょっと泳いでた。
私は新しいいたずらの企みで、即座に頭をいっぱいにする。
どうやってキスしてもらおうかな。