「ももって空気みたいだね」
私がおどけて言うと、ももも同じくふざけて笑った。
「ちょっとーそれどういう意味!」
「影みたいかも」
「は? 影? そんなにうち、暗い?」
私が近付くと、ももが向こうから歩いてくる。
私の動きに合わせてやってきてくれる。
私が抱きしめると、抱きしめ返してくれる。
あまりにそれが自然で、ももの肩に顔をうずめながら十三年の長さを思った。
「ももぉ」
優しいももちゃん。
ずっと変わらず優しかったね。
私が頑固になってしまったり、意地悪してしまったりしても、ももちゃんはいつも優しかった。
小指の爪をさわられてる。
好きだねえ。
この前もずーっとさわってたよね。
止めないと、ずっとそうしてるの。
ねえ、変な意味じゃないんだけど、このまま近付いて近付いて、一つになれたらいいのに。
私が思ってること、ももも思っててくれて、いつも安心していたよ。
同い年の子は全然いなくて大人ばっかりで、キャプテンの仕事なんかしてると、ベリーズの中でも一人ぼっちな気がしてた。
何も言わなくても、ももがわかってくれてるのが、すごく嬉しかった。
私は間違ってないんだ、ってもものおかげで思えること、たくさんあったよ。
「……さきちゃん?」
色んなこと任せちゃってごめんね。あんまり前に出れない性格なのを言い訳にして、ももに負担かけちゃってたね。いつも助けてくれて、ありがとうね。
そんなことを考えながら、私はめそめそ泣いた。
ももは真顔のまま、私の小指の爪をいじっていた。